スピアフィッシングジャパンカップ2005 大会レポート : 藤原

スピアフィシングジャパンカップ前日

受付前で記念撮影。「協会」の二文字が抜けているのはご愛嬌。

 昨年に引き続き宿泊先は島の研修施設。フェリー、ジェットフォイル、飛行機とさまざまな交通機関を利用して島入りした参加者が続々と集まってくる。受付入り口には燦然(?)と輝く「歓迎 日本スピアフィッシング様」の文字。

 この時点で集まっていた一堂で、喜びの記念撮影をする。昨年の大会を機に日本スピアフィッシング協会を立ち上げることを決意し、紆余曲折を経ながらここまでたどり着いた主催者にとっては、公の場所でこうして名前が披露されたことには感慨深いものがあったようだ。


 撮影時の表情にもその思いがよく表れて、いる……?








  魚で満ち溢れているであろう海を前に、参加者たちは気もそぞろ。明日の準備がある主催者を残して、本番の会場とは違うポイントへと向かった。海況は波高1m弱、透明度6~7といったところ。魚影は決して濃くなかったものの、日没までの数時間で十分すぎるほどの漁獲を確保した。底物を中心に小型ながら回遊魚も捕れたことで、明日の本番への期待感が高まる。

 「でっかい魚が来たからテンションマックスでゴムを引いたら、サメだった」とは珍品、ホウボウを採ったrioさんの弁。尾鰭の形からしてニタリではないか、とのことだが、そのポイントで潜った誰が出会ってもおかしくなかった状況だったため、一同ちょっとブルーな気分になる。

 

キミさんの漁獲。ヒラメ30オーバー。 まーくんさんは良形イサキときれいな
アカハタを捕獲。


前日の成果。潮がよくなかったため底物中心の漁獲となった。


持ち込み調理をしてくれるお店で乾杯
(顔が切れてしまった方、ごめんなさい!)


 その後、別行動をとっていた数グループとも合流し、総勢17名で捕った魚を肴にして再会を祝う前夜祭を開催。

 大会を前にしながら酔いつぶれてしまった昨年度を教訓に(?)余力を残したままお開きとしたが、一部の参加者はこの日からフルスロットルだったようだ。















スピアフィッシングジャパンカップ当日 開会式

大荷物にくくりつけられたフィンと手銛が
参加者共通のスタイル。

ひと夜明けて大会当日。前年度は、到着した参加者の送迎を前日入りした人間が行う手はずになっていたため若干の混乱をきたしたが、05年度は島内の足は参加者自身で確保するとの原則にしたことで主催者、参加者ともに時間を有効に使うことができた。







入り口でパンフレットとTシャツを配布。

 会場に到着した参加者には、早速大会オリジナルのTシャツとパンフレットを配布。Tシャツは某有名ブランドも手がけるメーカー製、パンフレットはWebデザインを本業とするミナガワさんの協力で出色の出来栄え。特に大会パンフレットに関しては、ビジュアル面の完成度が高まり、多くの参加者が感嘆の声をあげていた。安全講習プログラムは、製作にあたりフリーダイビングの上級者、Rさん、Mさんの協力を得ることができたとのこと。その内容は、こうした大会だけではなく普段の魚突きでも応用できるように、魚突きにおける注意点を広く網羅したもの。ここにまとめられた情報は、これからのスピアフィッシャーマンの財産と言っても過言ではないだろう。



Tシャツ背面。

 


大会パンフは、大会規定と安全講習プログラム、参加者名簿の3冊。


優勝カップとトロフィー&豪華商品。

 ロビーに入った参加者たちは、陳列されたトロフィーや賞品、協賛企業が展示即売を行う道具類を前に興味津々。この日お披露目されたpure-companyの手銛金物とチョッキバングルは、購入する人が続出し、開会を前に完売する商品も。


 ひと息ついたあとは誰ともなく自作手銛を取り出し、恒例の品評会がそこここで開始された。やはり上級者の手銛は機能的でスマートで、ラインの処理や銛先や押し棒に凝らされた工夫に黒山の人だかりができていた。試合そのものはもちろんのこと、参加者の多くがほかのスピアフィッシャーマンとの交流や、道具作りのノウハウを学ぶことを目的としてやってきていることを感じさせる光景だった。  



協賛ショップが展示した商品。 この日はじめて発表されたものも。

チタン&カーボンのハイブリッドのrioさんの手銛に群がる参加者たち。

















開会の辞は栗岩さん。

 12時よりいよいよ開会式。大会主催者のあいさつに続いて、前年度優勝者のMASAさんに本年度より用意された大会トロフィーが授与された。それとともに大会主催者よりMASAさんへ贈られたのは祝辞とお詫びの言葉。その内容は、MASAさんを優勝者ではなく最上位者として認定してしまったことを謝り、改めて優勝者として讃えるというもの。






MASAさんにトロフィーを授与。みんないい顔してます。

 「全体に魚が薄かった前年度は、優勝者のMASAさんでも、捕ったのはカサゴ28cmとイサキ34cmという結果。全国から参加者を募った大会の主催者として、誰もが納得できる漁獲が出るまで、優勝者を該当なしとする判断を下してしまったが、状況が悪いなかでも魚をそろえられたのは実力以外のなにものでもなく、MASAさんこそ優勝者でした」

との言葉と、優勝トロフィーを渡されたMASAさんに、参加者からは惜しみない拍手が贈られた。




 昨年に引き続き、潜るポイントはくじ引きで抽選した。くじを引く前に「自信がない方は優先的に潮の弱いポイントへ組み込みます」とアナウンスされたものの立候補する人は0。

 前年度からの1年で、参加者ひとりひとりがレベルアップしたこともあったのかもしれないが、見栄を張った人も多かったのでは? 潮流が強い島での開催だっただけに、主催者の顔には不安感が浮かんでいた。その後、くじを引いた後での参加者同士のポイントの交換は自由という規定から、くじの交換が行われ、上級者は深度、潮流があるが魚影の期待できるポイントへ、初心者は安全なポイントへと落ち着いた。  


 各ポイントへの配車をして、いざ出発! ……のはずが、この段に及んで参加者の数に対して車の数が足らないことが判明。トリッキーな配車とピストンを繰り返すことでどうにか開始時刻までにポイントへの移動を完了した。ちょっと間延びしてしまったものの、興奮してハイになっている参加者にとっては問題ではなかった(とくに加トちゃんさん)模様。




スピアフィッシングジャパンカップ当日 試技開始

サポートに入ってくれた『BUDDY』の面々。頼もしい!

 参加者の移動の手間を考えて、第1回目で会場となったポイントのうちの3つが新しいポイントと変えられた。これに加えて、各ポイントには東京海洋大学の素潜り潜水チーム『BUDDY』がタイムキーパーを兼ねたサポーターとしてついてくれた。入水した場所を振り返ると、大きく掲げられたフラッグと、その近くで見張りを行っている彼らの姿が目に入るのは、潜水する側にとって精神的に大きな支えになったことと思う。途中から降り出した雨のなかでも、辛抱強く待ち続けてくれた『BUDDY』にはこの場をお借りしてお礼を申し上げたい。ありがとう!




この日いちばん海況の良かったポイントでは
青空が広がった。

エントリーを待ちわびる選手。
静かな入り江からアプローチ出来るポイント。 開始の合図とともに一斉にエントリー。

集合ポイントに立てられてフラッグ。

 僕が潜ったポイントでは入水時の天候・海況は、天気は晴れ、波高は1m、透明度は10m未満といったところ。後で聞き取ったところによると、ほかのポイントも海況は似たり寄ったりだったようだ。島での魚突きで、多くの人が気にかけるのが潮流だと思われるが、この日は普段潮が早いことで知られるポイントでもゆったりと流れる程度。フィンキックで抗えないほどの流れが発生することはなかった。そのかわり、潮が動かなかったためか、どのポイントでも回遊魚の接岸はごくわずか。50センチ以上の回遊魚は見かけることさえ難しかった。





 底物をはじめとするそのほかの魚も全体に薄く、規定を満たす魚と出会うこともできなかった参加者も多かったのではないだろうか。広い海とはいえ、ポイントによっては一度に10人以上が入水したため、海の中でほかの参加者と出会うことも度々。そのつどお互いの漁獲を確認し一喜一憂したのは僕だけではない、と思う。  

見張り中のヒトコマ。
やっぱり頼もしくない!?

 試技の時間は3時間。1分でも帰還が遅れた場合はどんなに大きな魚をとっても失格となる。良型をそろえた参加者から岸にあがるかと思いきや、終了10分前になっても入水した岩場にいるのは見張り番だけ。どの参加者も、一発逆転を狙い、あるいはより突果を堅実なものにしようと躍起だったのだろう。












ミナガワさんの漁獲。
魚影が少ないなかでの成果。
さすがです。

 別のポイントでは、定刻に参加者全員がそろった時点で、良型のアカハタを3匹そろえたミナガワさんがトップであることは誰の目にも明らか。「17m以深にあった体がすっぽり入る穴に半身を突っ込み突いた」とのこと。


 着替えが終わると各ポイント間で、気がはやる参加者同士による携帯電話での突果報告のやり取りがされた。どこのポイントと連絡をとっても、ポイントごとのトップの突果は五十歩百歩。ただ一箇所、別の場所の見張りに立った丸山さんからは「今年もドラマがあったよ」とだけ告げられた。そのポイントは潮流、深さを考慮し、よしたけさん、rioさんなどの上級者が送り込まれた激戦区。宿泊先に戻る車の中ではさまざまな憶測が飛び交ったが、集合した場所で見せられた突果はそれらの想像を超えたものだった。







底物に若干回遊魚が混じったのは初心者ポイント。 別のポイントではコロダイやカサゴなど底もの中心。




スピアフィッシングジャパンカップ当日 計量と勝者決定!

 宿泊地で待っていたのはブルーシートの上に並べられた魚、魚、魚……と書きたいところだが、前年度に引き続き、日本中から猛者が集った割には控えめな漁獲。それでも全体で数十匹の魚が集められた。中でも目を引いたのは巨大なヒラメ2匹を筆頭にフエダイ、コロダイなどが積まれた小山。誰しもこれを見た瞬間に、丸山さんの言った「ポイント舵かけで起きたドラマ」が何を指していたのか悟ったはず。検量を待たずに、これらの魚を捕った人間が優勝者になることは明らかだった。


ホールに並べられたこの日の漁獲。根に着く魚が目立つ。

よしたけさんの漁獲はサイズ、数ともに群を抜いた。

 この突果をあげたのはよしたけさん。「海の底から垂直に立ちあがる根に沿って潜行。ボトムは水深23mほどで、目の前にいた1匹目のヒラメを突くと、もう1匹がそれを見にやってきたので、息をついだ後にすかさず潜り続けざまに突いた」とのこと。魚影が少ない場合、潜る人間の潜水時間と潜水の深度が漁獲を左右すると言われるが、それをよく示した上級者ならではの突果だといえるだろう。












沖縄出身のあかちんさんがイシガキフグをアバサー汁に調理。

 測る前から優勝者が明らかだったことで、主催者の栗岩さんによる「鬼の検量」も終始和ムード。検量が済んだ魚から、半分程度をその晩の打ち上げ用に提供してもらって、のりさん、健康さんが率いる料理人部隊が刺身やみそ汁に調理をしてくれた。


検量マスター栗さんとBUDDYが全漁獲を計測。













*注釈(2010年1月):当時の大会賞品を、シリアルナンバーが刻まれ複製が困難な事から、海外でのスピアフィッシング競技でメジャーなスピアガンRIFFEを優勝賞品としていました。しかし、日本の魚突き事情の中では不適切であるとの懸念より、後の大会より景品から外されております。



副賞の水中銃を受け取るよしたけさん。おめでとうございます!

 結果発表と表彰式は夜7時に開始。丸山さん、栗岩さんによる大会の総評の後に入賞者が5位から読み上げられた。

5位に入賞したのはアカハタ36.5cmとカサゴ33cmを捕ったまーくんさん。4位に食い込んだのは最年長参加者のオカ河童さん。漁獲はアカハタ35cmとコロダイ51cm。魚突きの黄金時代を知るベテランの参加と入賞を、皆、自分のことのように喜んでいた。

3位はなんと(?)よっしーさん。前年度、「初めてだったから突いちゃった」と幼稚園児サイズのギンガメアジを突いていた姿からは想像もできない飛躍っぷり。

準優勝はアカハタの39cmと38.5cmを捕ったミナガワさん。

 そして堂々の優勝は、よしたけさん。検量の結果、ヒラメ2匹のポイントを合わせるよりも、大きいほうのヒラメとフエダイを合わせたほうが、総ポイント数が大きくなるこが判明し、その組み合わせでの優勝となった。


 優勝者にはカップとトロフィーとともに、「第二回大会優勝者」の銘が刻まれたriffの水中銃が贈られ、準優勝以下、5位までの入賞者にはそれぞれ協賛のpure companyより、フィン、マスク、ベルト、ナイフなどの副賞が贈られた。みなさん、本当におめでとうございます。


 それでは3位から優勝者までのコメントは以下の通り。

3位 よっし~
「最近、アカハタが突けるようになりましたが、まさか3位になれるとは思いもよらなかったです!」

2位 ミナガワ
「前年タイムオーバーしてしまったので、とにかく時間だけはかなり気にしていた。

 競技場所の割当抽選は奇しくも昨年と同じポイント。潮流がなかったのでひたすら沖の吹深場に降りて魚を待った。だいたい根のトップで20m前後。最大で23mまで潜った。

 しかしポイントになるサイズの対象魚はアカハタぐらいしかおらず。イシガキダイは数はいたがみな小さかった。一度だけサイズ以上のイシダイを突くチャンスがあったが、少し遠くてためらっているうちに逃してしまった。

 潜水に関しては自分のコンディションが良く、気持ちよい潜りができたが魚に出会えず。結果はアカハタのみ。いいサイズは突けたのだが、順位には全く自信がなかった。他の選手も苦戦を強いられたようで、よしたけ君に次いで準優勝につけられたのは意外で素直に嬉しかった。

 悔しさや後悔は無く、また来年に向けて腕を磨こうと素直に思った。自分の能力は出し切った結果だったので満足。」

優勝 よしたけ
「前年のボーズの悔しさから、チャレンジャーの気持ちで挑みました。 一人で変に真剣にやっちゃってごめんなさい・・・ とにかくはやる気持ちを抑え、静かに謙虚に繰り返し潜りました。

 このときはたまたま『出逢い』をものにできただけ。 次こそはちゃんと実力をお見せします!」

入賞者と主催者での記念撮影。来年は全員で囲んで撮りましょう!

王様じゃんけん&くじ引きで豪華商品を抽選。

 食事の用意が整うまでの時間で、協賛メーカー様からご提供いただいた品々のお楽しみ抽選会が催され、笑う人あり、泣き崩れる人(?)あり。抽選会が終了しても夕食が間に合わなかったため、協賛のpure companyが持参した商品を放出してのじゃんけん大会を敢行、多数の豪華商品が振舞われた。



BUDDYの女の子はロングフィンをゲット。




ベテランダイバー、オカ河童さんが若手を抑えて入賞。
敗れた南海人さんは素敵なリアクションを披露。










乾杯の音頭とともに始まった懇親会は大盛況。

 表彰式のあとは自分たちが捕った魚を囲んでの懇親会。「翌日のお土産ダイブがあるからほどほどに……」なんて人は皆無で、みな大いに食べ、大いに飲んだ。クライマックスはアルコールが入って勢いづいた参加者による感謝の胴上げ大会。栗岩さんと丸山さん、サポート代表のだいもんさんが何度も空中に放り上げられた。






胴上げされた主催者&サポーター。左から丸山さん、栗岩さん、だいもんさん。

2005年スピアフィッシングジャパンカップ 試技結果

選手
合計ポイント
魚種
サイズ/重量
ポイント
よしたけ
111.40
フエダイ
46.0cm/2.0kg
57.50
ヒラメ
77.0cm/4.4kg
53.90
ミナガワ
92.95
アカハタ
42.5cm/1.4kg
46.75
アカハタ
42.0cm/1.5kg
46.20
よっし~
83.05
アカハタ
39.0cm/1.1kg
42.90
アカハタ
38.5cm/0.9kg
40.15
オカ河童
69.10
アカハタ
35cm/0.7kg
38.50
コロダイ
51.0cm/1.9kg
30.60
まーくん
50.15
アカハタ
36.5cm/0.9kg
40.15
カサゴ
33.0cm/0.7kg
10.00